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もちろん。嬉しいし助かるのだが――
(ええっと……正確にはあたし、
あの時、途中で引き返してしまって、
あの声の人、たぶん助けていないのだけど……)
「腹は減っていないか?」
そう訊かれた途端、
安堵したのも手伝って腹の虫が騒ぎ出す。
「え? ええ。少しだけ……」
単純なリリアは、
あれほど打ちのめされていたにもかかわらず、
既にもう恩人になりすまし、
ゼルラーデルの言葉に甘える方に
気持ちが傾いてしまっているようだ。
「アンナ! まだか!」
「はいはい。只今参りますよ」
ゼルラーデルが再び声を張り上げると、
どこからかやけにのんびりとした声が返ってきた。
「アンナ。客人だ。
何が食べる物を用意してくれ」
「あら?
お客様だなんて珍しいですこと」
広間の奥の緩やかに弧を描く階段の上に、
非常にふくよかな中年女性が姿を現した。
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