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灰色がかった銀髪をシニョンに纏めて、
あまりに豊かな胸囲をしているため、
押し上げられたエプロンの下で、
黒いドレスの胸周りがはち切れそうになっている。
風体からしてメイドなのだろう。
足許が見えにくいのか、
アンナはつま先に視線を向けたまま、
手すりをしっかりと握り締めながら、
一歩一歩慎重に足を進めている。
やっとのことで階段を降り、
拳で腰を二・三度叩いた後、
ようやく丸い顔がこちらへ向けられた。
「あらあら。まあまあ。
可愛らしいお嬢様ですこと」
アンナはおっとりと言いながら、
彼女なりの早足で歩み寄ってきた。
「リリア・キャラベルです。
このような夜分に申し訳ありません」
「いいえ。宜しいんですのよ?
お気になさらずに。
さぁさ、どうぞこちらへ」
アンナはそう言って、
まん丸の顔をくしゃくしゃにして微笑んだ。
主と違って随分人の良さそうなアンナの笑顔に、
リリアの身体から余分な力が抜けていく。
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