森の中の館

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「まあまあ。リリアさんったら、 ふらふらじゃないですか。 分かりました。 このアンナがお背中をお流しして差し上げますわ」 「やっ……ええと……あの。 ふらふらなのはアンナ様に押されているからで…… あぁ……じ、自分で洗えま……あぁ……」   無駄に広い洗い場を浴槽の方へ 弾かれるように進みながら、 リリアは懸命に説明を試みるが、 当のアンナは全く聞く耳を持たない。 「いいえ。なりません。 リリアさんはお疲れなんですわ。 このアンナにお任せ下さいませ」   妙な使命感に燃えるアンナに気圧されて、 結局、リリアは頭の天辺から足の先まで、 皮が擦りむけるのではないかと思うほど、 徹底的に洗い尽されてしまったのだった。 「お召し物はこちらに置いておきますからね。 どうぞごゆっくり温まっていらっしゃいませ」   ぐったりと疲れ果てたリリアを 浴槽に放り込んだアンナは、 ようやく満足気な様子で 浴室を出て行ってくれた。    リリアは浴槽の縁にもたれかかって眼を閉じ、 大きく息を吐き出した。   身体の疲れと気疲れとが、 いっぺんに押し寄せてきた感じだ。
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