155人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあまあ。リリアさんったら、
ふらふらじゃないですか。
分かりました。
このアンナがお背中をお流しして差し上げますわ」
「やっ……ええと……あの。
ふらふらなのはアンナ様に押されているからで……
あぁ……じ、自分で洗えま……あぁ……」
無駄に広い洗い場を浴槽の方へ
弾かれるように進みながら、
リリアは懸命に説明を試みるが、
当のアンナは全く聞く耳を持たない。
「いいえ。なりません。
リリアさんはお疲れなんですわ。
このアンナにお任せ下さいませ」
妙な使命感に燃えるアンナに気圧されて、
結局、リリアは頭の天辺から足の先まで、
皮が擦りむけるのではないかと思うほど、
徹底的に洗い尽されてしまったのだった。
「お召し物はこちらに置いておきますからね。
どうぞごゆっくり温まっていらっしゃいませ」
ぐったりと疲れ果てたリリアを
浴槽に放り込んだアンナは、
ようやく満足気な様子で
浴室を出て行ってくれた。
リリアは浴槽の縁にもたれかかって眼を閉じ、
大きく息を吐き出した。
身体の疲れと気疲れとが、
いっぺんに押し寄せてきた感じだ。
最初のコメントを投稿しよう!