森の中の館

30/36
前へ
/421ページ
次へ
「アンナ様。 けれど……この夜着は少しだけ…… ええと、露出が多くありませんか?」 生地が少ない。 穴が空いている。 などという失礼な言葉を使わないようにと、 珍しく気を使いリリアが言うと、 アンナは途端に表情を曇らせた。 「あらま。お寒いですか?」 「いいえ。寒くはないです。 少しだけ風通しが良すぎて 落ち着かないですけど……」 屋敷の中は隅々まで温められていて、 どこにいても寒くはない。 リリアとしては是非、 後半部分に耳を傾けて欲しかったのだけれど、 当のアンナは前半部分を聞くなり ぱっと表情を明るくした。 「それは良かったですわ。 さぁさ。傷の手当をいたしましょうね」   どうやら後半部分はアンナの耳には 届かなかったらしい。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加