155人が本棚に入れています
本棚に追加
極度の空腹に耐え
ようやく食卓につくことが叶ったリリアは、
心からの謝意を述べて、
まずは香ばしい匂いを漂わせているパンに
おずおずと手を伸ばした。
手で千切ると
きつね色をした焼き色の中から、
真っ白なパンが姿を現す。
「こんなに白いパン初めて食べます」
斜め後方に立っているアンナを振り返って、
リリアは満面の笑みを浮かべた。
村で食べるパンは、
《ふすま》が多く入っていて、
もっと濃い色をしている。
ヴァンから与えられていたのも、
似たようなものだった。
上質の小麦粉を使用して作られた
白くてふかふかのパンなど、
小麦を栽培していてさえ
口に入るものではなかったのだ。
「うぅー」
「あらま。リリアさん。どうしました?」
千切ったパンを口に放り込んだ途端、
リリアはテーブルの上で両手を握り締め、
呻きながら苦悶しだした。
最初のコメントを投稿しよう!