155人が本棚に入れています
本棚に追加
「牛の尻尾ですよ」
「ウシっ!?」
事も無げに告げられた食材にリリアは眼を剥く。
スプーンを落とさなかったことを
褒めてもらいたいくらいの衝撃だ。
「う、牛って…………
た、食べられるんですか……?」
(……しかもシッポって)
「あらいやだ、もちろんですわ。
料理長自慢のスープです。
うふふ。美味しいですよ」
ここザイル王国では食用の牛は希少であるため、
それを口に出来るのは一部の貴族だけだ。
ソフィエルには
専ら農耕用として飼育されている牛がいるだけで、
リリアは王国内に牛を食する風習があることを
知らなかった。
それ故に牛の、
しかもシッポのスープを食べ物だとは、
どうにも受け入れ難いのだった。
それでも、
出された食べ物を残すという思考は無い。
「よし」と妙な気合を入れ、
覚悟を決めたリリアは、
スプーンですくったスープの上澄みを
恐る恐る口に運んだ。
最初のコメントを投稿しよう!