森の中の館

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「牛の尻尾ですよ」 「ウシっ!?」 事も無げに告げられた食材にリリアは眼を剥く。 スプーンを落とさなかったことを 褒めてもらいたいくらいの衝撃だ。 「う、牛って………… た、食べられるんですか……?」 (……しかもシッポって) 「あらいやだ、もちろんですわ。 料理長自慢のスープです。 うふふ。美味しいですよ」   ここザイル王国では食用の牛は希少であるため、 それを口に出来るのは一部の貴族だけだ。   ソフィエルには 専ら農耕用として飼育されている牛がいるだけで、 リリアは王国内に牛を食する風習があることを 知らなかった。 それ故に牛の、 しかもシッポのスープを食べ物だとは、 どうにも受け入れ難いのだった。   それでも、 出された食べ物を残すという思考は無い。 「よし」と妙な気合を入れ、 覚悟を決めたリリアは、 スプーンですくったスープの上澄みを 恐る恐る口に運んだ。
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