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大きな窓の向こう側には
霧が立ち込めていて月の高さは窺えないが、
この屋敷へ着いてから随分と経っている。
おそらくもう深夜といっていい時刻だろう。
「あらあらいけない。
ゼルラーデル様がお待ちでしたわね」
リリアがふぁっと
あくびを漏らしたのに気付いたアンナは、
べつだん慌てた様子もなくそう言って、
のんびりと言葉を継いだ。
「随分お待たせしてしまいましたわねぇ?」
(あぁそういえば、
食事が終ったら部屋に来るようにって
言われたような気がするわ……)
座っていた椅子をアンナに引かれて、
リリアは眼を擦りながら立ち上がった。
明日にして欲しいという嘆願は、
あのゼルラーデル相手に通用しないだろう。
機嫌を損ねて追い出されてしまっては
安眠どころではない。
リリアはあくびをかみ殺しながら、
突き当りが見えないほど長い廊下を、
急かすこともなくのんびりと先導する
アンナの後に付いて行った。
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