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リリアの実家は彼女が記憶する限り
裕福だったためしがなかった。
それでも両親は知恵を絞り、
極めて質素ではあったけれど、
家族九人の生活はこれまで何とか成り立っていた。
けれどこの夏の干害は
過去に類を見ない過酷なものだったのだ。
春に収穫していた小麦で
何とか納税は出来たものの
一家が冬を越すだけの貯えは無く、
挙句の果てには、
人足として働きに出た父が、
半月も経たないうちに身体を壊してしまう始末。
とうとう
本格的に困窮してしまった家計を助けるため、
リリアは働きに出ることを決意したのだった。
しかし両親と弟妹の生活費、
それに父親の薬代。
それは満足な教育も受けておらず、
何かしらの技術も持たない彼女にとって、
決して簡単に稼げる金額ではなかった。
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