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「ゼルラーデル様。
リリアさんをお連れしましたよ」
ほどなく扉を叩く音と、
続いてアンナの声が予想の的中を告げた。
「ご苦労だったアンナ。もう休んで良いぞ」
言いながら立ちあがり
扉へと向ったゼルラーデルは、
真っ白な天井の一角に意味有り気な視線を送る。
そして、開いた扉の先
ちょこんと立っているリリアを見て
一瞬言葉を失った。
「……。アンナの仕業か……」
額を押さえて独語を漏らした後、
ゼルラーデルは廊下の先に眼を向け、
のろのろと歩いていくアンナの背中に
何事か言いかけたが、
ため息をついて言葉を飲み込んだ。
「あの……?」
長い睫をぱちぱちと瞬かせていた表情が
困惑を帯び、やがて不安げに揺れる。
「……ごめんなさい」
「どうした?」
謝罪の意味が分からずに、
ゼルラーデルは瞳を細める。
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