00.記憶

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08.避難所での夜 夜が訪れた。 電気が止まり、建物の中は暗い。 僅かに点る非常灯の光だけが広い室内を薄暗く照らしていた。 どうしようも不安が込み上げて来る。 そんな時、突如悲鳴が上がった。 何事かと地に落としていた視線上げれば、窓の方に人が集まっていた。 急いでその人だかりへと向かう。 次の瞬間、暗い夜空が明るく光った。 そう遠くはない場所で黒煙を上げて火柱が立ち上っている。 詳しい事は分からなかったが、外にある何かが激しい勢いで爆発したのだ。 その方角は……家がある方向。 終わった…… そう、思った。 家が燃えた。 何もかもなくなってしまった。 俺はその光景から目を離すことが出来ず、ただ茫然と立ち尽くしたまま、泣いていた。 もう何も、考えることが出来なかった。
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