00.記憶

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04.避難 ドタバタと騒がしい音を経てて足音が階段を駆け上がって来る。 バンと勢いよく居間の扉が開かれた。 そこには息を切らし、肩で息をする兄の姿があった。 「今すぐ避難するぞ!!」 兄は勢いよくそう言い放った。 マジか……と正直思った。 避難したところでまた何もないのがオチだ。 連日続く余震や津波注意報にすっかり感覚が麻痺してしまっていた俺はあの凄まじい揺れを体験しても尚、避難する事には消極的だった。 “宮城県沖地震” この言葉を聞いた事があるだろうか? 地元の人間以外には馴染みのない言葉だとは思うが、宮城在住の俺はそれを知っていた。 これは簡単に言えば、宮城県付近で起こる大きな地震の事を言っていて、その確率は2011年から10年以内に70%、20年以内に90%、30年以内には99%起こると確か当時は言われていた。 大きい地震が起こる確率は30年以内に99%。 その確率に危機感を持つか持たないかは人それぞれだと思うが、当時はまだ若く、30年という月日が長く遠いものだと感じていた俺にとっては、それがまさか今日、今この瞬間の事であるとは夢にも思っていなかった。
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