00.記憶

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05.問題 避難には消極的だったものの、とりあえずは避難をする事になった。 どうせまたすぐに帰って来る事になる。 携帯の充電器と財布と、とにかく必要最低限の物だけを持った。 しかし、避難するのには一つ大きな問題があった。 それは祖母の足だった。 祖母は足を悪くし、膝に金属を埋め込む手術をしていた。 杖を付きゆっくりと歩けば歩けない事もなかったが、一番近くにある避難所は地元ではきついと言われる坂の上にあった。 そんな祖母がはたしてあんな急な坂を登れるのだろうか。 不安は勿論あった。けれども、足の悪い祖母を一人家に置いて行く訳にはいかず、兄が祖母の身体を支え、俺も手伝ってとにかく早々に家を出た。 外は寒くその日は霙が降っていた。
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