2人が本棚に入れています
本棚に追加
「疲れた・・・まじ疲れた・・・」
1面の流氷に閉ざされた北の海。
そこに、冬毛で膨らんだキタキツネがたった1匹。
ヨロヨロ・・・
ヨロヨロ・・・
「あ~~~~~~、だいぶ歩いた。」
疲労困憊のキタキツネのスゥプラは、右へふらふら、左へふらふらと覚束無い脚どりでひたすら歩き続けた。
幸い、ライバルの他のキタキツネやオオワシやオジロワシといった天敵も全く居ない。
逆に、キタキツネのスゥプラたった1匹しかここに居ない。
孤独。
キタキツネのスゥプラは、遥か向うの土地で秋に親ギツネから子別れしたばかりの、若いキタキツネだ。
「今頃、俺の兄妹は何してるのかなあ・・・俺はここに1匹・・・延々とこの1面白すぎる大地のど真ん中だ。
本当に飲まず食わずで、腹へった。
もう『腹へった』という感情より、『疲れた』という感情の方が大きいよ。
疲れた・・・
疲れた・・・
疲れた・・・
疲れた・・・
もう、『疲れた』という言葉しか出ないよ。
ギギギギギギギギギギ・・・
みしみしみしみしみしみし・・・
流氷のきしむ音が、凍った大地の上に響き渡る。
「何だか不気味だな・・・この白い地帯は。
でも、そんなことどうでもいいんだ。
眠いぃぃ・・・ふぁ~~~~~~あ・・・」
キタキツネのスゥプラは、大きく口を開けて欠伸をした。
そして、フサフサとした尻尾を枕に丸まってゆっくりと目を閉じた。
ぐ~~~~~・・・
ぐ~~~~~・・・
ぐ~~~~~・・・
ぐ~~~~~・・・
キタキツネのスゥプラは、そのまま豪快なイビキをかいてぐっすりと眠りこけた。
1面の流氷のど真ん中で。
最初のコメントを投稿しよう!