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画面を見ている私に構う事無く、週刊四文の者は再び話し始めた。
「銘苅さんって、ここ最近体調不良で仕事をキャンセルする事が多くなりましたよね? それで編集部の方で調べたんですが……あなた、末期の胃癌と余命を宣告されましたよね?」
「なっ……ん、え……」
何で知ってるんだ? 何故だ?……余命宣告の時以上の衝撃だった。一瞬ではあるが、自分の身体の全機能が同時に止まった気がした。そのせいか、口から発する言葉は速度制限がかかったようだった。
週刊四文の者は、そんな私の様子に感づいていた。そして、畳みかけた。
「そうですね?」
「……」
言葉が出なかった。それ以前に、どうするべきかわからなかった。
黙ったままの私への追及は終わらなかった。
「世間にはあまり知られていませんが、あの病院では医局で長く経験を積み重ねてきた准教授以上の人間が患者への余命宣告を行なうという特殊なルールがあるんです。講師や助教といった経験の少ないもしくは若い医局員は行いません……奥さんの親族が亡くなった今年初めから急に仕事をキャンセルするようになりましたよね? 関係者の方から色々と聞いたんですが、どうも葬式の準備やその他の作業、または育児の為に休んだとは思えないような日がいくつかあったんです。再度詳しく調べてみたら、あなたが先程の病院へ何度も行っていた事が確認できました……銘苅さん、人間ドックもしくはそれに近い検査を受けてたんじゃないんですか? そこで異常が確認されて再検査を受け、診断結果がわかった今日、末期の胃癌を告知されたと……」
「やめてくれ!」
言った自分も驚く程の叫びだった。身体の冷えを感じると共に、落ち着いた。
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