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「あれは誰の犬なの?」
「誰の犬か...分からない。そもそも生きていたのかどうか。竹内さんなら、笑わずに聞いてくれるかな。」
そう言って滝本さんが話してくれたのは、犬のチョコちゃんとのちょっと不思議な出会いだった。1週間程毎夜現れてはいつの間にか帰っていったチョコ。迷い犬なのか、勝手に抜け出した飼い犬なのか、それとも...。
「結局、本当の所は分からないんだ。名前も本当にチョコなのかも。でも良いんだ、チョコのおかげでさ、立ち直れたから。」
愛おしそうに語る滝本さんを見ていると、ちょっとチョコが羨ましい。私だって“チョコ”なのに。
「結局さ、溶ける溶けないとかそんな事よりも、誰がくれたか、って事が大事かなって思った。」
突然話の方向が変わり、滝本さんの言いたい事が良く分からなくて、頭の中はクエスチョンマークが飛び交った。
「で、今までボンヤリ過ごしてた分、ちょっと積極的に行こうかと思ってさ。ということで、来年のバレンタインデーは、俺の分だけ手作りしてもらえると嬉しいんだけど。どう?」
「へっ??」
それって....そういう意味で良いのかな?勘違い、じゃないよね?
「それって、それって、」
「俺と付き合って欲しいって事。」
ちゃんと目を見てそう言ってもらい、顔は最高潮に熱くなった。
「はい。」
嬉しすぎて泣きそう。そんな私を滝本さんが笑って見つめている。そっ、それはっ、私が溶けます。
〈end〉
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