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チョコ×チョコ
「チョコ!」
呼ばれて振り向くと、同期の野々山麻鈴が私の席のすぐ近くまで来ていた。
「今度の合コン、考えてくれたぁ?やっぱり人数足りなくてぇ。チョコも来てよぉ。」
語尾を甘ったるく伸ばす特徴的な話し方、これが野々山麻鈴の通常運転だ。二重のクリッと大きな目は、巧みなメイクでしっかりと強調されている。同じ制服を着るとスタイルの違いも嫌というほどに見せつけられる。小柄ながら均整のとれた体つきは本当に羨ましい。
合コンは苦手だ。知っている人と話すときでも、会話のテンポとか間合いとか、返事の内容とか、色々と考え過ぎてしまって上手く話せないのに、初めて会う人となんて、どうしたら良いのか分からない。それに、わざわざ野々山さんの引き立て役になりたくはない。前にも断ったのに、困ってしまう。
「ゴメン、野々山さん。その日はやっぱり都合つかなくて...。」
「ええっー?!もうっ。マリンて呼んでいいよぉ、同期なんだからぁ。マリンの頼みだよ、聞いてよぉ。ねっ、もう一回考えてぇ!」
彼女は言うだけ言うと、私にもう一度断る隙も与えずに立ち去った。
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