太田君と大谷君

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「ややこしいな。なんでそんなこと訊くんだよ」 「ややこしいって何がだよ? 別に、ほら、漫画見てなんとなく」  スマホの画面を大谷に向けたが、一瞥して鼻で笑うと、本を開いてページをパラパラとめくりながら言った。 「好きな奴がいるか訊くのって、告白の下準備だろ。普通」 「告白? 普通? そうなの?」 「100%、そうだろが」 「100はないって。だって今俺が訊いたのだって、ただの世間話だし?」  大谷が黙った。黙って目を伏せる。勝った。やった、論破してやった、と両手の拳をぶんぶん振り回していると、ハードカバーに目を落としたまま「お前は」と続けた。 「お前は好きな奴、いるのか?」 「えー、いないよ。だって男子校じゃん」  大谷は何か言いたげに口の端を少しだけ持ち上げた。 「あ、明日さ、合コン誘われてんだけど。共学の女子だって。大谷も一緒に行かない?」 「俺はいいよ」 「なんで、彼女欲しくない?」 「欲しくない。好きな奴、いるから」 「えっ」  ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がった。 「好きな子、いるんじゃん!」 「いるよ」 「誰? どこの学校? いつから? 俺の知ってる子?」 「わかんねえのかよ」 「え?」     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加