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「ややこしいな。なんでそんなこと訊くんだよ」
「ややこしいって何がだよ? 別に、ほら、漫画見てなんとなく」
スマホの画面を大谷に向けたが、一瞥して鼻で笑うと、本を開いてページをパラパラとめくりながら言った。
「好きな奴がいるか訊くのって、告白の下準備だろ。普通」
「告白? 普通? そうなの?」
「100%、そうだろが」
「100はないって。だって今俺が訊いたのだって、ただの世間話だし?」
大谷が黙った。黙って目を伏せる。勝った。やった、論破してやった、と両手の拳をぶんぶん振り回していると、ハードカバーに目を落としたまま「お前は」と続けた。
「お前は好きな奴、いるのか?」
「えー、いないよ。だって男子校じゃん」
大谷は何か言いたげに口の端を少しだけ持ち上げた。
「あ、明日さ、合コン誘われてんだけど。共学の女子だって。大谷も一緒に行かない?」
「俺はいいよ」
「なんで、彼女欲しくない?」
「欲しくない。好きな奴、いるから」
「えっ」
ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がった。
「好きな子、いるんじゃん!」
「いるよ」
「誰? どこの学校? いつから? 俺の知ってる子?」
「わかんねえのかよ」
「え?」
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