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「おはよう」
山道君にかける声が上ずる。
「おう、伊藤、おはよう! 伊藤は厚着だな。筋肉がないからだろ」
「う、うん。山道君みたいに鍛えてないから」
今日は挨拶だけじゃなかった! それだけで僕の心は弾む。
でもどのタイミングでチョコを渡そう。
考えながら教科書を鞄から出して机にしまう。
「伊藤君」
クラスの女子が僕の机の前に何人かやってきて、次々にチョコレートをくれる。
「お! 伊藤モテるじゃん!」
「そ、そんなことないよ」
僕はなんとも言えない気持ちになりながらそう答える。僕にチョコレートをくれる女子がいるように、山道君もチョコレートを何人かからもらっていた。
僕はそんな様子を見て、一気に気持ちが沈んだ。
ああ。僕が女子だったらこうやって山道君にチョコを普通に渡せるのに。
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