0人が本棚に入れています
本棚に追加
飴売りばあちゃんから買った飴で、私は沢山のことを知った。
悲しみは案外甘い味がして、全てとけたあとも口の中に悲しみの味が残る。喜びは口の中にいれると、泡になって弾けていった。怒りは舐め終わるとどんな味だったか忘れてしまった。焼き餅は一度始めると癖になるから、とばあちゃんは売ってくれなかった。
「なんだか素敵だね。」
うん、子どもたちはあのばあちゃんのことが大好きで。みんな、嫌なことがあったらその飴売りばあちゃんのところに行って、不幸を飴にしてもらった。それから、お互いに飴を交換するんだ。そうすると、嫌だったことは忘れちゃうことができたし、貰った方も甘い味を楽しめた。
「へぇ、頼まれたものを飴にすることもできちゃうんだ、そのおばあちゃん。」
そう。どんなものだって飴にしてくれた。
それで、ある時から、ばあちゃんに皆無理難題を吹っかけるようになった。不倫の味、宿題の味。みんなが舐めてとかしてしまいたい事を飴にしてもらうようになったんだ。
ばあちゃんはなんでも飴にしてくれた。宿題の飴を舐めたやつは翌日先生にこっぴどく叱られたっけ。
「あはは、宿題忘れて怒られるとか懐かしいなぁ。」
最初のコメントを投稿しよう!