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「またお会い出来るとは思いませんでした。」
「すみません。」
「いえ。謝ることは無いですよ。光栄です。」
どうなんだか。洋子叔母さんにはあの後、半ばヤケクソで「私も是非にってお返事して」と電話をした。そんな訳でまずはランチでもと、土曜日のお昼、内藤さんに連れられてイタリアンレストランに来ている。
「内藤さんはどうして今まで再婚されなかったんですか?」
もうどうにでもなれ、という気分で直球の質問を投げつけた。この見てくれで、相手が見つからない訳が無い。それとも何か隠れた悪癖でもあるのだろうか?
「うーん、若い頃の失敗で、もう懲り懲りだと思ったからかなぁ。そんな気になれなくて。瞳子さんこそ、どうして結婚されなかったんですか?」
投げつけた球は打ち返され私を直撃した。“結婚しなかった”のではなく“出来なかった”のだ。
「呪いです。私ね、主役になれない呪いがかかっているんです。」
「呪い?」
「そう。呪いです。」
内藤さんがビックリした顔のまま固まってしまった。厄介な女だと思っているに違いない。お見合いの席では泣き出すし、今は今で変なことを言い出すし。もう次は無いだろう、そう思ったら、必要無いことまでペラペラと喋ってしまっていた。
「高校の時に好きになった人は、私の親友と付き合うことになりました。大学の時に好きになった人は、相談に乗ってくれていた友だちと付き合いました。」
「ああ、なるほど。」
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