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「でもねっ。そんなのは良いんです、よくある話です。でもね、結婚の約束をした人まで!後輩に寝取られました。」
「ぶっ、寝取られ...。」
「婚約して、式場も決めて、寿退社で会社も辞めて。それなのに、あっちに子どもが出来ちゃったからって、そんなのアリですか?」
何だろう、食前酒が回ったのだろうか?コレじゃあ絡み酒だ。
「それは...酷いね。」
思い出したら涙が滲んできた。あれから色々な事が一気に起こった。まるで婚約破棄された事が引き金だったかのように。
婚約破棄に落ち込んでいる私に追い打ちをかけたのは、両親の死だった。もしかしたら私以上にショックを受けていたのかもしれない。二人は相次いで病気で亡くなってしまった。
「だから、呪いなんです、主役になれない。」
内藤さんはきっと呆れていることだろう。そう思うと、顔も上げられず、チビチビと水を飲むしかなかった。コースの料理は終わってしまった。後はデザートとコーヒーだけ。内藤さんと会うのもこれで最後かな、そんな事を思ってボンヤリしていた。
「ちょっと失礼。」
内藤さんはそう言うとスマホを取り出し操作を始めた。着信?メッセージか何か?目の前の変な女よりも、スマホの向こう側の人と話したくなるのも仕方がない。
「瞳子さん!」
「はっ、はいっ。」
急に呼ばれて驚いて顔を上げたら、目をキラキラと輝かせた内藤さんがこっちを見ていた。
「明日、予定空いてますか?」
「はっ、はい?!」
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