呪いを解く方法

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*** 「もうっ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですかぁ。もの凄く間抜けな顔だったんでしょうけど。」 「ゴメンゴメン。可愛かったですよ。驚きと落胆と怒りが絶妙に混じった表情で。」 可愛いなんて言われたら、それ以上怒れないではないか。内藤さんは山頂に着いた今もクスクスと笑っている。さっき頂上の手前で私に間抜けな顔をさせた物は、キレイに舗装された道路を走る車だった。そう、この山は山頂のすぐそばまで車で登ってこられるのだった。 結構なスピードで走り去る車に驚いた後、4時間近くも一生懸命に歩いて来たのにそれはないではないかと、怒りと落胆で複雑な気持ちになったのだった。 その後、数分で山頂の広場に到着した。街並みが随分と下に見える。あんな所から自分の足だけで登ってきたのだ。 「お腹すいたでしょう?お昼ごはんにしましょう。」 そう言われ、先ほど見かけた茶屋にでも行くのかと思ったら、内藤さんは山頂の広場の端にシートを敷き始めた。 「えっ、私、お弁当とか持ってきてないですよ?」 「大丈夫です。」 内藤さんがそう言ってバックパックから出してくれたのは、爆弾サイズのおにぎりだった。 「ん、美味しい!」 最初は何てサイズのおにぎりだと驚かされたけれど、山登り後の空腹は最高のスパイスになっているようで、お世辞抜きで本当に美味しかった。 「何でこんなに美味しいの?」 「山だから、ですかね?後でお楽しみもありますよ。」 そう言って、内藤さんが食後にバックパックから取り出したのは携帯用のガスコンロだった。お湯を沸かし、丁寧にコーヒーをドリップしてくれた。 ステンレスのカップに入れて渡されたコーヒーは、香りだけでも十分に楽しませてくれたけれど、口に含むと感動が広がった。 「んん!美味しい!!こんなに美味しいコーヒー、初めてです。こだわりの豆とかですか?」 コーヒーに全くこだわりの無い私がそう聞くと、内藤さんは嬉しそうに微笑んだ。 「何にもこだわりはないですよ。その辺のスーパーで買った安い豆です。でも美味しく感じるでしょう?下界で飲むコーヒーと同じ物でもね。」 この山頂は標高931メートル、それ程高い山ではないけれど、自分の足で登ってきた達成感が、コーヒーの味まで変えてしまうのだろうか?
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