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「いつもこのような感じなので癖が抜けないのですよ」
「そっか、まぁいいよ。その人らしく居られた方がいいしね」
それはルキアにとってありがたい言葉だった。仲良くなっても敬語が取れず勘違いされてしまうこともあった。そんな中自分らしくいてくれて良いと言われているような気がした。
「まだ時間あるし花の管理方法とか分かる限り教えてあげるよ」
「それは有難うございます。花に詳しく無いので、この後書庫に行って調べる手間が省けました」
「ま、分かる範囲だけだから他は聞くなり調べるなりしてね」
書庫には沢山の本があり、花についての書物もあるだろうと踏んで後ほど行こうと思っていた。だが、人に教えてもらえるなら問題ない。沢山の本の山から一つ一つ見つけ出さなくてすみそうだ、と考えていた。
それからジンの時間が許す限り花についての勉強会が開かれた。一通り説明し終わる頃には空が暗くなり始めていた。何種類か分からないものがあったものの、殆どはジンに教わったことで事足りそうだ。
「あとは分からない種類のものについて調べる為に書庫に行きますか。それが終わったら今日は終わりにしましょう」
今日の最後の目的を決めたルキアは、迷いなく足を進めた。歩いて数分で着いた書庫は古風な形をしており、今ではあまり見かけない形をしていた。
「失礼致します、誰かいらっしゃいますか?」
ノックをし扉を押してみると、中は図書館のような現代のものだった。古くからあるのは扉だけのようだ。呼び掛けに対して返事はなく、入口から見えるカウンターにも人影はない。扉に鍵がかかっていなかったことから中に人は居るのだろうが、許可も無く中に踏み入って良いものかとルキアは迷っていた。
「書庫にご用でしょうか?」
突然後ろから声を掛けられ一瞬警戒したが、なんでも無いように振り返った。
「明日から庭師として働くルキアと申します。花についての書物を読みたくてきたのですが、返事がなくて」
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