王燈実

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 現実は厳しく、最初は手がかりすらつかめない日々が続いた。  だが、それでもめげずに試行錯誤を続けていると、ある日ようやく条件を満たすシステムが浮かび上がってきた。そのシステムとは、竜(シェ・クゥシン)を敵陣の内側に飛び込ませて敵を内部から崩すという、前代未聞の兵法だった。  燈実自身は、王将兼、銀配分の騎兵として、敵の前線を回りこんで王将を狙う鋭い動き出しをくり返す。  呂布の異名を持つ王燈実の騎兵としての恐ろしさがすでに知れ渡っているからこそ、敵軍は自分達の王を強襲から守るために守備ブロックを作ることを強いられてしまう。  そうやって作られたブロックの内側へ竜のシェ・クゥシンを飛び込ませつつ、吉野揚羽を中心とした残りの駒に外側から攻撃させれば、敵軍は内と外から破壊されることになる。  燈実は自身が開発したこのまったく新しい戦術に「嵐龍戦術」という名をつけ、装将棋で用いはじめる。二戦、三戦と対局を重ねていくうちに、嵐龍戦術が装将棋のそれまでの常識では考えられないほど強い戦術であることが、徐々に明らかになっていった。  その度を越えた強さから、嵐龍戦術は日本のメディアからいつしか、皮肉を込めて「ウイルスシステム」と呼ばれるようになるのだった。
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