独占愛

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 僕はテーブルに除菌スプレーを手早くまき、ティッシュで拭き取った。急がなければ。  ふみちゃんがキッチンでコーヒーを淹れている間に、やらなければならないことがあるのだ。  ふみちゃんの背中を横目で見つつ、まずは部屋全体をチェックする。  うん、どこも変わった事はない。  それからスマートフォンを見る。ふみちゃんはスマートフォンのロックに指紋認証ではなく、9つの点を線でなぞるパターンを使っている。  ふみちゃんがスマートフォンをいじるたびに解除しているので、盗むのは簡単だった。  よし。怪しい着信やコメントもなし。  ベッドも見る。布団が乱れているが、いつもの通りだ。問題ない。  ふみちゃんに限って、心変わりや浮気などあり得ない、そう思ってみるものの、百パーセントという事はない。もしも、そう思うといてもたってもいられなくなり、部屋をチェックせずにはいられなくなってしまう。ふみちゃんの家で料理を作るのも、部屋のチェックをするためなのだ。  そう、もしふみちゃんが他の男に心移りするようなことがあったら。僕は……僕は……。いいや、考えるのはよそう。ふみちゃんに限って、そんなことはないはずだ。  「よし、ここで最後……。」    呟きながら、ゴミ箱をのぞく。ただの念のための確認だ。  (おや、この手書きのメモはなんだろう?)  ゴミ箱からメモ紙を拾い上げ、見慣れない筆跡の手書きの文字を読もうとした時、ふみちゃんがコーヒーカップにお湯を注ぎこむ音が聞こえてきた。  コポコポコポ……。  僕の心には不安がなみなみと注がれていく。ふみちゃんの背中を見ながら僕はメモ紙をそっとポケットに落とし込んだ。
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