ドーン・オブ・リハビリテーション

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手術を終えて数日間は激痛と高熱、炎症が酷くて寝たきりだった。 一昨年(2017年)の夏にもお尻の腫瘍をとる手術をしたが、その時もこんな感じだった。 人によっては手術の傷なんてすぐにふさがり、当日には体調バッチリだという。 どうも俺は傷が長引きやすい体質のようだ。 数日間は安静に寝たきり生活だったのでリハビリはしていなかったが、寝返りを打ったり膝を立てたり伸ばしたりして、よく体を動かしていた。 緊急入院する前と比べると、鈍い気がするが手術前と比べたら動くだけマシである。 これはリハビリはじまったら楽勝で歩けると確信した。 そして、熱も下がり手術痕の痛みも治ってきた頃にリハビリが始まった。 「まず座ってみましょうか」 一応介助はしてもらったが、ベッドの縁に難なく座ることができた。 まぁこれくらいは余裕ですな。 「じゃあ立ってみましょう」 オーケーオーケー余裕余裕。 …… あれ? 立てない。 脳は「立て」という信号を送っているのに、体はピクリとも動かない。 怖い。なんて恐怖だろう。 脳の命令に体が従わないなんて。 あまりの恐怖に泣きそうになったが、冷静な先生の声に我を取り戻す。 「太ももに力を入れてー。 そう。 次は腰とお尻に力を入れて ゆーっくりお辞儀をするように上体を倒して……」 先生は「立つ」という動作を細かく分割して、1ステップずつ行うように指示をする。 「立つ」という命令は聞かない体でも、一つ一つのステップは実行できた。 意識すれば意識した部位に力を入れることはできる。 (ただしふくらはぎと腰はまだ力が入らないが) そうして何度も一つ一つの動作を意識しつつ立ち上がりを繰り返す。 しかし今一歩、立ち上がれない。 「今日はここまでにしておきましょう」 結局、立ち上がれないままその日のリハビリは終わった。
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