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2019/02/04 03:33 am
その日は深夜までうんこを我慢していた。何故かというと昼間うんこをしようとした時に下半身に激痛が走ったからだ。
あれから10時間近くうんこを我慢している。我慢の限界だ。
俺はズボンと下着をおろすとトイレに向かった。
トイレの個室は狭いので、腰痛を抱える俺には個室でズボンを脱ぐのが難しい。
だからいつも居間で下半身裸になってからトイレに行くのだ。
杖を頼りに慎重に腰をおろす。その瞬間、腰から下が燃えた。灼熱の炎に包まれたのだ。
もちろん比喩であって実際には耐え難い激痛が走っただけだ。
しかも今度の激痛は昼間のよりも凄かった。うんこを漏らしつつトイレの床に倒れた俺は一ミリもそこを動けなかった。
真冬の北海道。極寒のトイレで1時間ほどじっとしていると、足が氷のように冷たくなりビシビシ痛みが走る。このままでは冗談抜きで凍傷になる。
最悪の場合、凍死も有り得る。ここは北海道、折しも寒波も到来しようとしていた。
腰から下の激痛は続いており、しかも下半身が麻痺して全く動かない。これは参った。
杖をうまく使い、トイレのドアを開いて身をよじってトイレを脱出。
その際に勢いよく飛び出たため、脱出と同時にトイレのドアを閉めてしまった。ついでに杖もトイレの中に閉じ込めロスト。
下半身裸の俺はトイレよりなお寒い玄関で横たわっていた。
(状況が一向によくなってない)
死に場所がトイレから玄関になっただけである。おまけに杖をロストした分、悪化したとも言える。
救急車を呼びたいがスマホは居間にある。
玄関から居間のスマホまでの距離はおよそ5メートル。今の俺には難しい距離だ。
とにかく狭いトイレよりかはいくらか広い玄関で楽な姿勢をとり、痛みを和らげることにした。
随分時間が経ったが痛みは退かないし、下半身も全く動かない。
このままでは結局凍死だ。仕方ないな。
静かに死を覚悟したその時、玄関の外からハイヒールの音が聞こえてきた。
時間はおそらく5:00くらいだろうか。同じアパートに住む水商売のお姉さんが帰宅したのだ。希望が見えた。
救急車を呼んでくれ!!
そう叫んだつもりだったが、声は出なかった。声を出そうとすると激痛が邪魔をしたのだ。
お姉さんはツカツカと階段を上って階上へと消えていった。
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