トイレサバイバー

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チャンスは逃したが光明は見えた。 あの水商売のお姉さんは、いつも朝の5時ごろに帰ってくる。 スマホも時計もないから分からないが、多分今は朝の5時ごろなのだ。 ということはあと2-3時間待てば、朝の7時か8時にはアパートの誰かが働きに行くはずだ!! 多分、このアパートには大学生も住んでいたはず。チャンスは多い。 つまり数時間後には登校/出勤タイムが来て、俺が倒れている玄関の前を結構な人数が通るのだ。 そのうち誰か一人にでも助けてもらえれば良い。 俺は玄関を匍匐前進で進み、玄関の扉に手をかけた。 鍵を開けて玄関の隙間から顔でも出してれば、おそらく緊急事態を察してくれるはず。 よーし鍵をあけて、顔をほんの少し出そう。 そう決めて扉ににじりより、郵便受けをうまく使って、扉に背中を預けることに成功した。 左手を伸ばして玄関の鍵を開けようとするが届かない。あとほんの数センチなのだが! 俺は呼吸を整える。深呼吸をして精一杯体を伸ばす準備をする。 一際大きく息を吸い込み、細く長く吐き出しながら左手を伸ばす。ふぅー!! 肺の中の空気が尽きた時、左手が鍵にあたりガチャーンと勢いよく玄関の扉が開いた。 俺は冷たい廊下に投げ出され、情けなく下半身を露出していた。 しかし、これで良い。これで確実に発見してもらえる。 このまま廊下で何時間か待てば!! ……寒い。 今は何時なんだろう。5:30くらいか? それとも6:00にはなったろうか。 空は暗く時間は分からない。人が通る気配もない。 1時間か2時間待てば見つけてもらえる。 そのはずだ。 だがアパートの廊下はトイレや玄関以上に寒く冷たく容赦なく俺の体温を奪っていく。 待てるのか? こんな氷点下の中、ほぼ全裸の俺が!! 無理だ。 トイレで倒れてからおおよそ2時間。ほぼ全裸の俺の体温は下がりに下がっていた。 あと1時間なんて持たないかもしれない。 死にたくない。 俺は近所迷惑なんぞ考えずに大きな声を出すと気合で一瞬立ち上がった。 なんとか一瞬立てた!腰をひねって居間の方を向く。 激痛ですぐに倒れるが、頭は居間を向いている。方向転換には成功した。 全く動かない下半身をひきずりながら、腕の力だけでじりじりと進んでいく。 息絶え絶えになりながらも、俺はついにスマホを手にした。
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