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恐れず
初春のある日、都から遠く離れた森の奥に住む私は王宮に呼ばれた。
王命とか、なんとか。
森の魔女と恐れられ、右目には眼帯、左目は血のように紅い瞳。高麗では珍しい白い艶やかな髪。子供たちからはお化けと言われ、大人からは魔女と呼ばれる。そんな私が王宮に呼ばれるわけがない。
「なんで私?」
周りに聞こえないように、小さな声で愚痴を漏らすと、深い大きなため息を漏らした。
笑いものになることは分かってる。
こんな見窄らしいパジチョゴリを女が着ているとなれば、笑いものになるのは見えているとも言えよう。
「ようこそ、ナギル様。陛下がお待ちです」
綺麗なチマチョゴリを着ている。尚宮のようだ、背後にぞろぞろと供を引き連れている。
「こちらです」
尚宮に連れられて、皇帝の元に案内された。
「おお!参ったか!」
大きな湖の上にかかった吊り橋の真ん中に、机が置かれ、皇帝と4人の男が酒を飲んでいた。
「お初お目に掛かります。憎しみ、悲しみ、怒り、恐怖、絶望の魔女、ナギルと申します。血に染まった玉座に座られた、第2皇帝恵宗」
私は皇帝とは目を合わせずに、腰を折った。
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