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ロシアンルーレット
もし仮に私の吐いた何気ない迂闊な言葉の切れ端が、誰かの心を抉る弾丸、ナイフ、ダイナマイト、毒薬、それらの凶器になっていないとは、限らないのである。
たとえそれを私が覚えていないとしても。
それは確かに事実として、見えないところに見えない傷を生みだしたのだ。
ふと気づいた時、手元の縫い針が指を刺したのをきっかけに私は顔を指先から上げて時計を見た。
ーーああ、今日もまた何もせずに終わった。
誰かを傷つける事もなく。
必要に迫られて取った針を仕舞う前に、人差し指の先をぎゅうっと渾身の力を込めて握り込む。
これは経験則。
おかげで血は出なかった。
それが喜ばしい事なのか、今の私はわからない。
たとえ何かしらの見えない凶器を振りかざしてでも……私はそれをするべきなのか。
そう、私がこの世に生きるあらゆる人々から受けているようにして。
愛しても、大切にしても、どこにそのトリガーがあるかわからない。
けれど、それぞれが持っている、しかも複数。
見えない内側に持つ厄介な代物に、自分すら気づかなくて驚く事もある。
ロシアンルーレットのように回る。
誰の頭を弾丸は撃ち抜く?
引き鉄は気軽に引かれる、ほら今また。
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