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「……普通ね」
女王様は生まれた我が子を胸に懐き、しみじみとおっしゃいました。
「まあ、そんなものよね」
「お母様!」
この国ではありふれた茶色の髪の娘は、特別赤くもない唇を三日月の形にして微笑みました。
薄くそばかすが見えてきた肌を陽に晒し、一目散に駆けてくる娘。
「白雪姫」
黒檀の窓枠にもたれながら、青白い顔をして女王様は我が胸に飛び込んできた娘を抱きとめました。
「姫様!王妃様はお身体の具合が優れないのですからそのように勢いよく飛びついてはなりません!」
「ごめんなさい……お母様」
「いいのよ、いつもの事だから」
跳ね回る白雪姫を慌てて追いかけていた従者が、息せき切ってやって来ました。
毎日の事なので女王様は慣れたものですが、従者は少々哀れだと、心の優しい女王様は思いました。
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