爆炎天女

2/67
前へ
/67ページ
次へ
<はじめに>  すでに書いたが、筆者は故平井和正先生の大ファンである。そのために、平井先生の二次創作に執筆意欲がわく困った人間なのだ。  平井先生は、生涯をかけて、一つの巨大な物語をつむいでおいでだったと、わたしは勝手に想像している。そして、それが”幻魔大戦”に収束するというのは、わたしの願望でありつつ、その発想に沿って、それを証明したいがために一連の短編を書いているのだ。  なぜ、幻魔大戦に固執するかといえば、筆者がこの作品世界の虜だからである。  魂丸ごと鷲づかみにされてしまった。  少年東丈が始めた”GENKEN”が絵空事だと思えなくなってしまったのである。  今の人たちならそれをして”厨ニ病”というのだろうが、当時の私は、そんなこと、考えもせず、ド嵌りして以来、今日に至っているのである、さあ、笑え。  何者でもなかった私は、やっとこさ、ここに居場所を見つけることが出来たのである。  そして、あの破滅世界漫画の小説化のはずなのに”GENKENがその世界を変えて、明るい勝利をもたらしてくれるに違いない”と思い込んでしまった、困った人間なのである。  たしかに、そこに”打開策がある”と、私には思えたのである。  ”愛と友情のエネルギー”が幻魔の”暗黒エネルギー”を駆逐するというのは、十分に方法論として、成立しえると確信できた。  だからこそ、その途中で東丈が失踪したときには、正直、パニックに陥ったのだった。  ”愛と友情を提唱した、その責任者が失踪するだと?”  そんなこと、あってはならなかった。  しかし、それが、物語の厳しい現実だった。  あるいは、そこで、物語として、その世界から足抜け出来た人は、本当に多いことだろう。  しかし、  私は、それが出来るほどの器用ではなかった。  それほど、あの世界が見せた魔法は、私にとって鮮やかであり、足抜けを許さなかった。何よりも、足抜けしようという気は、一度も起こらなかったのである。  東丈が失踪するには、何か、理由があるに違いない。  平井先生が、その答えを与えてくれるに違いない。そう信じ、そして、幾星霜、今日に至っていた。  しかし、私の納得できる回答を記した幻魔大戦の続編を記されることなく、平井先生は他界されてしまった。それほど、平井先生にとり執筆は命を削る行為だったのだ。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加