162人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
それをいつもつるんでいる友達に話したら、「いよいよ初デートか!」「手繋いで歩くのかぁーオイッ!」「いきなりキスじゃねぇ?」などと、面白おかしくちゃちゃを入れてくる。
しかし、いつもなら1番にちゃちゃを入れてきそうな太一の顔は少し強張り、心ここに在らずといった感じだった。
いつもと違う太一の様子がどうしても気になり、勝に聞いてみると、「そりゃそうだよ。アイツ由美ちゃんと同じ小学校で、その頃から彼女が好きだったんだぜ」と言う。
知らなかったとは言え、太一の好きな子だった子と付き合ってしまっていたのだ。
俺にも言ってくれてたら付き合ったりなんかしなかったのに…。
その程度だったのに…。
それを聞いてからは、彼女の毎日のメールも、デートの日どりを決めるのも、凄く嫌なことをしている気分になった。
太一が、勝や冬哉達と、2人で肩を組んで楽しそうに笑ってる姿を見ると、何を話しているんだろうか? 俺が太一と肩を組みたいと思うようになり、仲良くしている勝や冬哉がうやらましくて仕方がない。
俺が由美ちゃんと付き合うようになってから、太一は明らかに2人きりになる事を避け、2人だけで話す事が無くなっていたのだ。
余計に太一の事ばかり気になるようになっていた。
デート当日、長い髪をポニーテールにして、青いカーディガンに、膝上の白いスカートの由美ちゃんの私服姿は可愛く、清楚な彼女によく似合っている。
それなのに、これからの時間をすでに楽しめない自分がいた。
映画を観て、マックに入り、楽しそうに話す由美ちゃんに、これ以上期待させては申し訳ないという気持ちばかりが湧き上がってくる…。
「これからどうする?」
「本当に、本当にごめん!!せっかく勇気出して告白してくれたのに、俺やっぱり由美ちゃんと付き合えない。ごめんなさい」
楽しみにしていたであろう初デートで、いきなり振られた彼女は、予想外の返事に何を言われてるのかわからないといった様子でポカンとしていたが、暫くすると我に返り大きな目に涙を溜めている。
「私、何か悪いことしちゃったかな…」
由美ちゃんは何も悪くないのに!
「由美ちゃんが悪いわけじゃあないんだ、俺が悪い。かわいくて、優しい由美ちゃんを好きになれると思ったんだ。けど、俺気になる奴ができちゃって…」
最初のコメントを投稿しよう!