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「あだぁ!」
体育のサッカーの時間、グラウンドで派手にすっころび、膝に大きく痛々しい擦り傷を作った。自分の膝を見ると、結構えぐれている感じで、ずきずきと鈍い痛みが発生している。
「清美! 大丈夫か!」
「大丈夫だよ、とりあえず保健室に行ってくる」
「その脚で歩くのはキツいだろ! 俺が運ぶ!」
正義は俺の後頭部とお尻に両手を当てて持ち上げた。よりにもよってこいつ、お姫様だっこの格好で持ち上げやがった!?
「ヒュー! ヒュー! お熱いねお二人さん!」
周りの野郎どもから、黄色い歓声が飛んできた。
「その持ち上げ方は止めろ――――――っ!! 普通におんぶしろ――――――っ!!」
「うるせえ!! 怪我人はずうずうしく俺に抱っこしてくれって言ってりゃあいいんだ!! それとも俺じゃあ不満か!!」
「俺が問題にしているのはそこじゃねえ!!」
正義とはこんな感じに会話のキャッチボールがまともに出来ないことは頻繁にある。俺はお姫様抱っこの状態で保健室まで運ばれていく。当然ながら、その様子を教室の窓から見ている生徒もいた。特に女子辺りが興味津々に見ている。やっぱり女子というのは、男同士のこういう絡みを好意的、むしろ性的にに感じるのだろうか?
「保健室は、誰もいないみたいだな」
正義は俺を保健室のベッドに降ろし、消毒液や絆創膏を探した。膝をすりむいただけなのに、ここまでしてもらって申し訳なく思う。
そして、俺はもう一つの異変に気づいた。乳首が濡れているかのような感触がある。不味い! このタイミングで母乳が出ているだと!? 絶対バレてはいけない! 絶対バレてはいけないぞ!
「なあ、匂わないか?」
「え? 何の匂いだ?」
「誰か牛乳でも飲んだのか? 乳製品の匂いがする」
なにぃ!? こいつ、まさか俺の母乳の匂いが分かるというのかぁ!? 馬鹿だからこそか、嗅覚がすごく優れてやがる!!
「なんか、ベッドのあたりからだな。いや、清美からか?」
「そ、そうだよ! 今日牛乳飲んだからさ!」
母乳が出るなんて事実を知られまいと、咄嗟に嘘をついた。
「いや……匂いがお前の口元からっていうよりは、胸元からするのはなんでだ?」
なんだよこのラノベや漫画でありがちな絶対バレてしまうような流れ! 体操着の胸元がまた母乳で濡れているのではないかと思い、咄嗟に胸元を両腕で隠した。
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