俺の母乳を吸うな!

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「あら、帰ってきてたの?」 「!?」  唐突に俺の部屋に母親が入ってきた。  咄嗟に両腕で乳首を隠した。 「ノ、ノックぐらいしてくれよ!!」 「だってドア開いてたしね~、あれ? 何か隠しているの?」 「嫌、何も」 「嘘。お母さんはあんたのそういうところはちゃんと分かりますから。嘘ついていますっていうのが態度に出ているのよ。ほら、胸元に何か隠しているんでしょ、見せなさい」 「か、母さんには関係ない! 思春期の男子の隠し事に一つや二つあってもいいだろっ!」 「そうは言ってもね。お父さんが海外出張で清美(きよみ)の世話を見ているのは私だけ。ならば、なおのこと私が清美を知らないと!」  母さんは俺の胸を隠す両の腕を引きはがそうとした。もちろんそうはさせまいと、俺は両の腕に力をこめる。 「掃除の時に見つけたあんたのエロ本、机の上に出ているわよ」  なに!? 俺が巧妙に隠したと思っていたエロ本が!?   「うりゃ」 「あっ」  古典的な手に引っかかってしまった。俺は両の腕を引きはがされ、母乳まみれの乳首を公開してしまったのだ。 「あら? 清美これって……」 「……」  かくして、母さんの策略により、俺のおっぱいから母乳が出ることを知られてしまった。  翌日、学校を休んで母さんと一緒に病院に行くことになった。女性の検診を主とした病院で、子宮がん・乳がんといった検査や育児相談、そして母乳の相談もしてくれるとのことだ。  受付で母が診察券や健康保険証を出し、症状の有無を書く紙と体温計を貰った。俺は体温計をはさみ、記入用紙に色々と書いていく。症状の記入欄を書くところで少し手が止まったが、母に急かされて、母乳が出ますと書いた。諸々の手続きを終えて、待合室に入った。予想はしていたが、やはり女性しかいない空間だ。この場に俺がいることがイレギュラーとしか思えない。俺が体温を測ったり、症状を書いている時に、奇妙そうに見ている人がちらほらといた。早くこの空間から逃げ出したいなと心底思った。 「佐藤清美(さとうきよみ)さん、診察室にお入りください」  ついに俺の診察の時間がやってきた。俺のこの母乳出る出る症候群は深刻な病気なのか、そこがすごい心配である。
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