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「清美君は病気ではないですのでご安心ください」
女医の先生から俺が望んでいた言葉が出た。母も安堵の表情を浮かべた。この言葉を聞くまで、CTスキャン、血液の採取、俺のおっぱいをもみもみされたり等、気が気でない時間を過ごしていた。
「清美くんは一般的な男子高校生よりも血液の生成量が多く、余分な血液を母乳として出しているようです。成長期に一時的にあるものなのでご安心ください。男性の方でも母乳が出るという事例は意外と多いんですよ。ただし、母乳を出しておかないとおっぱいが痛くなると思いますので定期的に出してくださいね」
つまり、俺はしばらくの間、定期的に自分の母乳を出さなければいけなくなるのか。
「お母さんが吸ってあげてもいいのよ。清美のおっぱいチューチューしたい♪」
「うるさい! 一人でなんとかするからいいわい!」
俺の母乳騒動はようやく一段落ついた。家に帰ってから、今後のことを考えた。まず高校でこれを知られては非常に不味い。これを知られたら俺はどんな目で見られるか……。
さて、一日ぶりの学校である。教室に入るとすぐに声をかける奴がいた。
「よう清美! お前昨日学校休んでいたけどどうしたんだ?」
「ああ、ちょっと体調を崩しちゃってな」
昔からの腐れ縁である佐藤正義が俺を心配して話しかけてきた。クラスの席順や当番は名前で決まるので、同じ佐藤であるこいつとは、一緒になる事が多く、話す機会が多い。
「大丈夫か! まだ具合は悪くないか!」
「大丈夫だよ正義、この通り元気だからさ!」
「いつも言っているだろ、俺の名前を呼ぶときは正義とか正義ってよんでもいんだぜ!」
「馬鹿だな」
「ああ! 俺はかっこいい馬鹿さ! 馬鹿はかっこいいんだぜ! 夢中で何かを極めるのが得意だからな!」
「やっぱり心底の馬鹿だお前」
親友の正義は本当に馬鹿な男であるが、この馬鹿な男と一緒にくだらない会話をしているのが心底楽しく感じる。気がつけば始業のチャイムが鳴り、会話が一番盛り上がっていたところでストップされた。担任が教室に入り、皆静かになった。
「おはよう! じゃあHRを始めるぞ」
昨日の事はまるで何も無かったかのように、学校の一日が始まり俺は安心感を覚えた。しかし、そうは許すまいと、イレギュラーが発生した。
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