第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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その様子は、美田園管理官でも顔を上げて注視した。 が、…。 「さ~て、今日は何に割り当てられるかな~」 織田刑事が如月刑事に言い。 「ど~せ聴き込みじゃ無いの」 と、彼が返す。 真面目な顔をした木葉刑事は、市村・飯田両刑事に。 「被疑者は、全て確保したんですよね?」 凄く真面目な顔をした飯田刑事が。 「恥を掻かされた手前で、誰が逃すかよ」 市村刑事も、既に仕事モードの顔をして。 「昨夜に、所轄が誰か一人はゲロさせてるさ」 仲間に無視された里谷刑事は、更に身を皆に近付け。 「ゴホゴホっ、インフルエンザかもぉ~」 と、甘えるものの。 5人はスマホを取り出したり、捜査資料を持ち出して見ないようにする。 その様子に、里谷刑事が鬼へと変わる。 「おのれ等ぁっ、其処に直れっ」 間近に居た久坂刑事が大笑いして、一応とフォローを入れた。 遠目の美田園管理官も、氷結の無表情を崩して微笑む。 ・・いや、軽い破顔だ。 気力が無い後ろの方の応援の刑事達だが。 篠田班は、どうでもいいらしい。 煩いぐらいに元気で、手柄の事を引き摺る様子が無い。 其処へ、八橋刑事がマスクをして来るや、木葉刑事が。 「八橋君、大丈夫かい? ケーキ、食べるか?」 これには、大魔神様がお怒りに成られた。 所轄から応援で来ている年配刑事や中堅刑事は、流石は一課の前線で戦う刑事達と笑って見ていた。 小さい事に拘って居ないのが、良く解る光景だ。 そんな様子を見る美田園管理官は、何故に木田一課長がこんな事をしたのか解って来る。 (あれ位でいじける班じゃ無いみたいね。 篠田班か・・・、面白いわ。 郷田さんや砺波さんが頼るのも、判る気がするわ…) 其処へ、美田園管理官のスマホに連絡が入る。 ‐ 今朝方、微熱が出始めた。 念の為、本日は休んで病院に行く。 後は任せた。 (木田) ‐ 冬だから仕方ないが、一課長が病欠では遣るしかない。 刑事部長に連絡すれば、政治的な事を処理する必要が在るとのこと。 美田園管理官に任せるとして、存分に・・と付け加えられる。 (郷田さんに続いて、私も此処で篠田班と一緒ね) こう思った美田園管理官は、席を立つや。 「皆さん、本日から木田一課長は御休みです。 熱が出始めたみたいだから、インフルエンザかも知れません」 その話に驚くのは、里谷刑事。 「ぐはっ、アタシじゃなくて一課長なのぉ」
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