第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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余裕を持つ雰囲気を醸して笑う美田園管理官。 「里谷さん、ざーんねん。 さ、サッサと仕事をするわよ」 こう言った美田園管理官は、皆の笑いを見てから。 「篠田班の皆さん、高橋班の皆さん、手分けして確保した全員の取り調べをして頂戴。 他の皆さんは、聴き込みで得られた事の裏取り、証拠品からの捜査に回って貰います。 さ、時間を掛けるのは面倒臭いから、ちゃっちゃと始めて下さい」 氷結の無表情と言われた美田園管理官が、今回で随分と表情を見せた。 係長、管理官と、優秀な分だけ、早く成った彼女にも、或る種の気負いみたいなものが在ったのか。 さて、飯田刑事と木葉刑事が、一人の男性を取り調べし始める。 やや面長で、一重の眼が細い男性だ。 全く黙(だんま)りを決めるその男性は、刑事達を見くびっているらしい。 ま、麻薬の製造に関しては真っ黒だから、本日の夕方を以て起訴する気の美田園管理官。 然し、午後の12時半を過ぎる頃に。 「はぁ~あ、どいつもこいつも、黙りだよ」 応援で来た刑事達が、遅くなる前にと昼に出る。 休憩と称し、会議室に戻った篠田班は、高橋班の面々や司馬刑事達を揃え、美田園管理官と八重瀬理事官の前に。 頭を抱える美田園管理官。 「見ての通り、昨日からあんな調子よ。 栽培してた方は、軒並みに罪を認めたけれど。 廃工場で捕まった四人は、通じて黙り。 このままでは、麻薬製造と銃刀法違反で送検・・ね」 だが、刑事達が入れ替わって行う取り調べの様子もチラっと見ていた木葉刑事が。 「いや、美田園管理官。 再度、取り調べをさせてくれませんか?」 八重瀬理事官、美田園管理官、篠田班長が揃って彼を見返す。 八重瀬理事官は、取り調べが効果を挙げない中に誰をと。 「どの被疑者を、だね?」 「コイツをお願いしたいんです」 指差したのは、四人の被疑者の中でも一番のイケメンだ。 廃工場で確保されたのは、面長で一重の男。 丸顔の小肥りな男。 細面で背が高い男。 そして、眼つきが鋭い整った顔立ちの男の四人。 「恐らく、彼が主犯格ですね」 木葉刑事がこう言うと、飯田刑事が。 「確かに、コイツが一番堂々としていて、確保の再もリーダー感としてたな」 市村刑事は、彼の表情から。 「コイツ、整形してる気がする」 織田刑事、里谷刑事も判ると云うし。 如月刑事に至っては。 「もしかして、さ。 美容整形の・・逆じゃないかな」
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