第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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「生前の芥田の現状や先の展望を聞くに。 あの犯罪が行われていた家で、支配人の様な師岡早希が殺害されたと知ったならば。 心配の一番は、自分達の存在が捜査機関にバレないか。 2番目は、金蔓の麻薬の在処や供給のパイプ確保、だよね?」 木葉刑事の話に、男性の眼が睨む様に変化するも、木葉刑事の話は終わらない。 「芥田は、君に連絡でもしてきたのかな? 麻薬の残りは何処か、原料は何処から手に入れているのか…」 此処で初めて、男性が拒否する様に横を向く。 それでも、木葉刑事は彼の顔を観察しながら。 「君、なんだろう? この闇組織のリーダーは。 我々が“天国”って呼ぶ拠点を束ねる巨大組織は存在しない。 君が、架空の組織を動かしている、違うかい?」 すると、一度軽く笑った後、ニヤニヤする男性だ。 「へぇ、それは凄いね」 だが、彼が捕まった以上、刑事も捜査の遣り方が在る。 「まぁ、安心していい。 君の遣った事は、何れ判る。 君が何処に行ったか調べて行けば、芋蔓式に行動範囲が判り。 何処で何をしてたか調べれば、また判る。 手始めに、君の過去から洗おう。 一緒に捕まった彼等は、君の学校で知り合った友人か。 ムショに居た時の知り合いかな? 一日一日、ジワジワと調べて追い詰めるよ」 「フン。 遣れるものなら…」 男性が言った時だ。 取り調べを行う部屋と、視聴室にノックが。 振り返る美田園管理官の前に、片岡鑑識員が。 取り調べをする部屋には、瓶内鑑識員が入る。 双方、渡された紙を眺めて。 「一致した」 と。 美田園管理官は、八重瀬理事官に紙を渡し。 「歩様認証、顔の認証、双方で彼は松潟と認識されました」 木葉刑事も。 「ほい。 君の歩く仕草と、芥田が殺害される直前に会っていた人物の歩く様。 今の君と、過去に逮捕された時の顔の写真などを比較した結果、骨格からの認証システムで君は松潟と一致したってさ。 これで、もう捜査の一環としてDNAも調べられる。 廃工場から採取された毛髪や体組織から、君の存在が明らかになるね」 木葉刑事の説明が進む毎に、男性の顔から笑みが消える。 昨日とは劇的な変化だ。 美田園管理官は、物静かに横を向くと。 「これだけ解れば、貴方達でも調べる事は可能よね? 泣き言は、聴かないわ」 睨まれた所轄の刑事達は、背筋に寒気を覚えた。 尚形係長も居て。 「今からでも動けっ! まだ夕方だ!!」
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