第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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迅速に送検は行われたが。 夜には事件担当の検事が美田園管理官の元を訪れる。 逮捕された松潟等は、波子隅や肥田同様に複数の事件に関与する可能性が高い。 今は、薬物の製造などの罪だが。 明らかに成る罪が在るだけ逮捕される訳だ。 勾留を受理されたの後の対応を話し合いに来た。 特に松潟には、芥田殺害の疑い、組織運営をした首謀者の疑いが在る。 その証拠が何処まで解っているのか、是非に知りたいらしい。 捜査陣首脳が忙しい夜。 会議室の後ろで、久坂刑事と木葉刑事が話し合う。 「木葉、取り調べで言ったのは、単なる推測か?」 供述を纏めた資料を眺める木葉刑事は、頷くのみ。 あれから他の三人へ再度取り調べも在り、一人が話し始めた。 小肥りの男性は、大学の頃に松潟と知り合った。 医学科の薬剤研究にも関わる研究助手もする、優秀な学生だったらしいが。 大学の研究費をかすめ取った時から転落の人生である。 二年ほど前に、出所した松潟と会って犯罪に誘われた。 大金に眼がくらみ、麻薬製造に精を出せば出す程に金が入るので、もう止められなかったとか。 直ぐ様、一人が口を割り。 その話が書類に変わった。 その資料を眺める久坂刑事は、高橋班長の元へ走った。 さて、其処に鎹班長が来る。 「木葉」 「はい?」 「歩様認証の一致を前にして、よくあの男に狙いを絞ったな?」 「まぁ、ヤマカンでは在りますが。 あの現場で樟葉に撃たれた若者が、芥田が麻薬売買を自分で遣ると言った。 だとしたら、その麻薬の仕入れ先は何処かと考えると。 全く別のルートを開拓するとしたら、時間が掛かったり、コストが掛かったりしますでしょう?」 「まぁ、そうだな」 「もし、芥田が松潟達を知ったならば、自分達に薬物を流せと迫る筈。 何せ、芥田や組長ですら組織の誰も知らない様なものですからね」 「ん」 「芥田は、極道として上を気にしない。 だが、繋がりは大切にしていた。 支配する上よりも、支配する下を可愛がる。 だが、調べる事は徹底してた。 実は、防犯映像を調べていた在る時、被害者を尾行する人物が映ってまして。 それが、殺害された芥田の小飼の若者だったんですよ」 「何っ?」 「最初の被害者、師岡早希の行動を調べて不審なタクシーを調べるに当たり。 更に浮き上がった不審な点が、昨年の11月半ば、彼女を公園から尾行する者が居たと云う事」 「あのガイシャを、尾行か…」
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