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その後、警視庁で始まる取り調べには、何故か木葉刑事は参加しない。 廃工場での鑑識作業の見張りも遣らせて貰えず、廃工場の外観を見て回る内に犯人達の護送に付き添いを命じられ。 これまで休み無しの状況を理由に、午前で上がる様に言われた。
木田一課長の命令に、彼は素直に従う。 仲間よりカンパを貰い、午後2時過ぎには警視庁で片岡鑑識員に会ってお金を預かり。 その後、智親鑑識員と合流するや、例の高いケーキと小さい花束を買った。 夕方、智親鑑識員と二人で鴫鑑識員の見舞いに行った。
夕方、4時を回り。
警察病院の個室にて、身を起こしてボンヤリ沈んでいた鴫鑑識員の元に、木葉刑事と智親鑑識員が見舞った。
「こんちわ~、鴫さん」
元気が無くて悄気ていた鴫鑑識員だが。
「こ・木葉どの…」
驚く鴫鑑識員の前まで来た木葉刑事は、薄緑色に桜や梅や桃の花をデザインされた入れ物を起き。
「まだ、食べられるか解らないけと、ケーキ」
「おぉ、これは…」
「春をイメージした最新のフレグランスを使った、ロイヤリクラウン・ドゥ・フロイライン。 大きいと食べきれないだろうから、3号ね」
見舞いなど、忙しく到底に無理と思っていた木葉刑事より。 最高のケーキと鴫鑑識員の大好きな花を差し入れられて、鴫鑑識員の窶れた顔に涙が流れる。
(な、泣いてるよ…。 よっぽど辛かったのかな?)
彼女の泣いた姿など見たことも無いからか、引いた木葉刑事だが。 鴫鑑識員は頷く様に。
「ありがたや、・・ありがきに」
此方に拝んで来る鴫鑑識員が窶れているのを見て、流石に木葉刑事も心配に成る。 椅子に座り。
「鴫さん、体は大丈夫かい?」
入院してより殆ど食べてない鴫鑑識員だが、木葉刑事が来た事に嬉しくて仕方なく。 髪を乱したままに、ケーキを食べると言った。
「智親さん、この紅茶を入れてくれるかい? 牛乳も買って来たから、ミルクティーの方が飲みやすいよね」
木葉刑事が気遣う事で、智親鑑識員も嬉しくなり。
「お任せく~ださい」
ケーキを箱から出せば、その花の香りが部屋に咲き広がる。
「食べられるかい?」
切って分ける木葉刑事は、優しく食べさせる。
二人の様子を確かめた智親鑑識員は、紅茶をカップに入れて二人分を出すと。
「では、御姉様のお着替えを洗濯して来まぁ~す」
「誠、迷惑を掛ける、智殿」
「大丈夫、御姉様はごゆっくり~」
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