第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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頼み込む様に、頭を下げた。 自分に対する捻れた意見からこうなった。 が、司馬刑事と久坂刑事は、それに巻き込むべきでは無いと言った様なもの。 久坂刑事も、司馬刑事も、木葉刑事の気持ちが解り何も言えない。 会議室でその様子を見ていた鎹班長も、山田班長も、木葉刑事の気持ちを理解して笑った。 実質の手柄と云うか、解決まで道を作ったのはこの3人だ。 これで被疑者にむざむざと逃げられ様ならば、認めた木田一課長を含む異論を言った刑事達に責任が跳ね返る。 会議が終わった後だ。 “お前達、責任は取れるんだろうな。 これで確保をしくじったら、お前達と一課長に責任が発生するぞ” 所轄の先輩刑事から、色々と言われた所轄の若者。 周りの賛同を得られると勘違いしていたが、実は違っていたと実感してしまった。 いや、それは陰の愚痴りで木葉刑事等の事を言おうが、警視庁と所轄には見えぬが歴然たる差が在る訳だから。 嫌味や愚痴り程度ならば、中堅の刑事や年配刑事も話を合わせてくれる。 彼等も、警視庁の刑事には憧れているし、若手の彼等と似た様な不満を持つ時期を過ごしたのだから。 だが、この直談判は意味が違う。 若手の彼等や他の所轄の刑事が挙げた証拠や情報を取られた訳では無い。 他が見逃した情報を、木葉刑事等3人が地道に調べて掘り起こした事実だ。 それを刑事に成り立ての者が寄越せなど、子供の“欲しいもの争奪戦”と変わり無い。 また、彼等に木葉刑事達3人の考えを超える計画プランや、間違いを指摘した明確な意見も無い。 味方と思っていた先輩達から言われて、孤立化した自分達を知る彼等。 尻込みし始める彼等は、明けた次の日に木田一課長へ再考する様に謝って言えども。 完全に頭に来た木田一課長は、 “我が儘もいい加減にしろっ!!。 俺も、お前達と腹を斬る構えだ。 事件が終るまでは、断固として方針は変えないぞ” と、彼等に言った。 たった2日か、3日だろうが。 確保が成功するまで、彼等がどれ程のプレッシャーに襲われたか。 それは個人差が在るだろうが、食事が喉を通らない者も居たし。 病欠しようとしても、許して貰えない者も居た。 トイレで泣いていた者だって居た。 クビの覚悟は勿論、自分達が木葉刑事の事をグチグチ・ネチネチと言っていた状況に、今度は自分達が成ったのだ。
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