第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

7/34
前へ
/34ページ
次へ
(バカ共が。 噂や愚痴で勝手に増長しよってからにっ。 自分達で捜査して、先走るならまだ解るが。 他人の手柄を横取りだと? 然も、思い込みで管理する側を批判するなんて、何を考えているんだ) 嫌になり、彼も本日は特捜本部を去った。 針の筵に座らされた若手は、取り調べも焦ってしまい。 そんな彼等から対処を相談される一課の山田班と鎹班だが。 “自分達だけでも出来るから、一課長の遣り方に異論を言ったんだろう? 悪いが、俺は木葉が不正や捏造をするなんて思わない側だ。 覚えとけ” “お前達、甘えるのも大概にしてくれ。 間借りなりに刑事なんだ、取り調べくらいは各自でやれ。 お前達が思う、優遇された警視庁の刑事に頼るな” 木田一課長の気持ちを理解し、敢えて彼等を突っぱねた。 応援で来た所轄の年輩の刑事は、自分達だけで何も出来ない若手に声援だけ贈って帰った。 ま、応援で来ていた間、何度も取り調べは経験している。 何の経験も無しに、取り調べ室に放り込まれた訳では無い筈だ。 だが、一番に困るのは、応援で来ている中堅刑事達である。 手柄は欲しいし、年配刑事の様に先が決まっている訳でも無い。 仕事をして、得られる功績は積みたい限り。 (なぁ、どうするか) (どうするもこうも…。 若い奴が被疑者に呑まれちまって、なんとも…) (あ~ぁ、これなら一課の刑事さんと組んでる方が楽だぁ。 あの木葉って刑事に比べたら、年齢は似てもモノがチャッチイよコイツら) (バカ、比べんなよ。 向こうは、木田一課長や管理官が頼るぐらいだぞ) (ちげぇねぇ。 張り合いが無さすぎるって云うか、存在感が違いすぎる) 手柄に餓える一方で、捜査のなんたるかを理解して来た彼等にまで、この様子は詰まらない。 明日に仕切り直しだが、このままでは士気が下がるだろう。 それを見抜いた司馬刑事も、本日は早々と帰宅した。 特捜の空気が、この2日ほどで急激に冷めて来た。 難事件がスピード解決しそうなのに、此処でこの躓きは痛い。 それを皆が感じるのだから、はてさてどうなるのだろうか…。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加