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 自室のテーブルの上に、ノインが買ってきたパンや肉、ワインが並んだ。 「さぁ食べよう」  そう促されてドライツェンはノインが買ってきたワインをグラスに注いでやる。その瓶をノインが受け取って、ドライツェンのグラスに注いだ。ゆらゆらと揺れる液面、みるみるうちにグラスは、美しいボルドーで満たされていく――。 「次の王は君だ、ドライツェン」  グラスをカンとぶつけて、ドライツェンはグラスを傾けた――。ノインはワインを口に含む――香り高いブドウの香り――一口だけで酔ってしまいそうだと思った。  刹那、向かい座っているドライツェンの体が、ゆっくりと傾いていく。その様が、まるでスローモーションのように見えた――。ノインは、目を見開き、その光景を焼き付ける。  ――バタン……!  そう、大きな音を立てて、ドライツェンがテーブルの上に突っ伏した。持っていたワイングラスがガシャンと音を立てて壊れる。ぽたぽたと、割れたグラスから赤い雫が床に落ちた。赤黒いシミが広がっていく――。 「ドライツェン! ドライツェン!」  ノインは蒼い顔をして、慌ててドライツェンの体を揺さぶった。だが、どんなに揺り起こしてみても、ドライツェンはピクリとも動かない。ドライツェン! そう、何度かドライツェンの体を揺すっていたノインは肩を震わせ始めた。泣いているのか―― 否――。 「……ははは、さよなら、最後の王子様。これで、次の王は、僕だよ」  ノインはテーブルの上に置いたワイングラスを手に取ると、口に含む。甘美な勝利の味は、僅かに苦く、深い甘みを帯びていた。
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