0人が本棚に入れています
本棚に追加
ある夕立の夜に、僕の肌から幾たびも滴る雨粒がその悲しみを表してくれていた。
僕の身体は大泣きしているようで、強く打ち付けるその音もまた、泣き声のようだった。
大雨で濡れながら、ふと体育座りで塞ぎ込んでいた重い顔をあげた。
傘を忘れたサラリーマンが大雨の中をカバンを頭に乗せて走って行く。
帰る場所へと、大好きな家族の元へと。
けれど僕にはきっともう、帰る場所はないのだろう。
どうして? と、聞きたいのは誰よりも僕自身なのだけれど、それに答えるのも当然、僕だ。
学校も、部活も終わったくらいのこんな時間に1人で、大雨の中、歩道橋の下でうずくまるしか出来ない理由を、最後の学生生活を、神様に向かって懺悔の時間にあてる事にした。
発端は、些細な恋心。
吹奏楽部での日々も終わりに近づき、志望校の受験も控えた今日。僕は見てしまった。
全ての授業が終わった学校の中では、色とりどりの音色がいつものようになっていた。
誰も居ない各教室で、僕ら吹奏楽はパートごとに自主練を始めていた。
そんな慣れた時間に、吹奏楽とは関係のない1年生が、僕ら3年の教室に目を輝かせ入ってきた。
「先輩、面白い物があるんできてください」と。
1度は練習中だからと断ったが、どうしても僕に見せたい、早くしないと終わっちゃうと急かされ、渋々と彼らについていった。
彼らに連れられてたどり着いたのは、理科室。
トランペットが個人練で使っていた教室であり、僕の好きな後輩がいるはずの場所。
薄い笑みを浮かべる後輩が指を一本口に当てながら、見てくださいと手招きした。
彼らに言われるがまま背を低くし、教室の奥の準備室を除くと、そこには彼女と、教師がいた。
最初のコメントを投稿しよう!