5人が本棚に入れています
本棚に追加
距離感
暗い館内に入り、琴美と申し合わせて確保していた一番最後尾の席に腰掛けて静かに観賞した。
すぐ隣に、こんなに近い距離に琴美がいる。
本当はいろいろ話しかけたかったが、琴美が「映画観る時は集中して観る」と言っていたので、話しかけず俺も映画に集中した。
映画の内容は、ちょっとあり得ない展開のラブストーリーだったが、琴美に恋しちゃってる俺にとってはキュンキュンで、楽しく見れた。
琴美がどう感じているのか気になって表情を覗き込むと、「やばい、眠たい…。」との答えが。
なんと、あなたが観たいと言ったんでしょうがっ!まだ序盤だよ!?
でも琴美が眠そうにしてるおかげで、俺は琴美に時々話し掛けて眠気を逸らしてあげることに切り替えた。
なにしろ映画館である。話しかけるためには耳元で語り掛ける。その時に肩と肩が触れるが、そこで琴美が距離を取ろうとする様子はない。
徐々に俺は琴美の方に身体を寄せて、眠っていないか顔を覗きこみ、また話しかける。
端から見れば恋人同士以外のなにものでないではないかっ!
そうこうするうちに琴美が俺が巻いていたマフラーを引っ張ってじゃれてきた。
琴美にとっては眠気覚ましだったのかもしれないが、俺にとってはこれは衝撃であった。
ただの友達やただの会社の上司にこんなことしますか!!!?
じゃれてんじゃん!!!!?
こんなオジサンと、
イチャついてんじゃん!!!!!?
映画はさらに進み、最初は恋愛感情のなかったオトコとオンナに恋心が芽生え、抱き合ってキスをした。
これはいけませんよ、今のワタシには(汗)
もう胸キュンとドキドキが止まりません。
残念ながら琴美の方は最後まで眠かったらしく、内容的にもあまり嵌まってはいなかった様子。
それでも俺は幸せだった。琴美とこんなに近い距離感で映画が見れて、それだけで幸せ。
最初のコメントを投稿しよう!