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「うーん。早く自分がどんなズルンズか知りたいっていう気持ちがあるけれど、でも急いで知りたいという気持ちも無いんだ。それにもしも図書館に行って記憶が戻るなら、記憶喪失の間に経験できることは記憶が戻ってからは経験できなくなっちゃうよね。だったら記憶喪失の間に経験できることはなるべく経験しておいてもいいと思うんだよね」僕は答えた。
「偉い、その探究心! 知を探求するブラックカオスドラゴンとしてはその気持ち、是非とも応援せずには居られないぜー」ブラドラちゃんは僕の肩を叩いて言った。「なあ便器ちゃん、おまえが例えどんなズルンズだったとしても、ブラックカオスドラゴンとはきっと気の合う仲良しズルンズに違いないさ。さあ、それじゃあ洞窟の奥まで探検に出発だー」
「おー」僕らは今日何度目かの号令を掛け合って、元気に洞窟の中を進み始めた。
2
洞窟を進んでいくと奥の方から光が漏れてくる。
「誰か先客がいるみたいだな」ブラカスちゃんは言った。
「大丈夫かなー、危険な生き物じゃ無いよね襲われたりしないよね」僕は聞いた。
「大丈夫だよ。この世界の動物に危険なんて無いよ。みんな優しくていい子達ばかりだもの」エメドラちゃんは言った。
でも三人は少し慎重になって洞窟の光を発している所に歩いて行った。角を曲がるとそこでその光の正体が分かった。
「あ、あれは海鮮時空ネズミの巣だ」ブラドラちゃんが言った。
目の前には畳を引いた座敷に丸い木製のちゃぶ台がひとつ置かれていて、その周りをぐるりと囲んでネズミの家族が座っていた。
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