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「帰り、少し遅くなるかも。ごめんね」そんなことないよ、そう僕は言った。僕も最近は小説だけでなく、作詞家としての仕事もあって忙しかった。そんな僕に君は笑顔で応えた。
次の日、君の帰りは遅かった。
帰ってきたのは朝日が上がるころだった。
「ただいまー」さすがに眠そうな顔を浮かべていた。
「零、 ご飯食べた?」君は事前に僕にご飯を用意してくれていた。いくら、僕が小説家と
いえ、申し訳ないとは思っていた。
食べたよ、ありがとう。僕がそう言うと、君はまた笑顔を見せた。
映画の撮影期間中だったのでしばらくこんな日々が続いた。
だけど、君はもう限界だったのかもしれない。
それは、映画の撮影が終了した日のことだった。
いつものように君は眠そうな顔を浮かべて帰ってきた。
そして、僕の部屋にやってきて、「ご飯食べた?」と聞いた。
僕は食べたと返事をした。
そして、君はいつものように笑顔をみせる、ことはなかった。
君は代わりに涙を浮かべた。
どうしたの?、と僕は聞いた。
でも、君はその問いかけにこたえることはなかった。
「…私、何やってんだろうね」君の瞳からは涙がこぼれた。
そして、君は僕の部屋からある壺を取り出だした。
君はその壺の中から僕を取り出した。
そう、僕の骨を。
僕は1か月前に交通事故で死んだ。
トラックの信号無視が原因だった。
あの日、芽衣が僕の葬式の手伝いをした日から芽衣は泣かなかった。
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