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『発覚』
君はいつも笑っていた。
でも、それが君を苦しませていたことを僕は知っていた。
「…今まで、本当にありがとうございました」「そんな…。こちらこそありがとうね」君は笑顔だった。「いえ。…それじゃあ、もう時間なので失礼します」君、蜂川芽衣(はちかわめい)は女優である。
そして、僕、古谷零(ふるやれい)の恋人でもある。
僕たちが出会ったのは5年前の大学生の時のこと。
若手の小説家として活躍していた僕の小説が映画化されることになり、その主演を務めたのが当時、女優の卵であった芽衣だった。
オーディションを勝ち抜いてきた君は、輝いていた。
僕のひとめぼれから始まり、数か月後には同棲を始めていた。
同い年の僕たちは趣味も合い、けんかもあるが、順調である。
今日も君は笑顔で晩御飯を作ってくれた。
「じゃん!今日は零の好きなハンバーグだよー。食べて、食べて」そう言いつつ、僕にハンバーグを手渡した。僕はハンバーグのいい匂いに包まれた。
「…明日から映画の撮影なの、覚えてるよね?」僕は頷いた。
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