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ちょっと顔がいいからって、いい気になるなよバカ。うん、伊万里って美形は美形なんだけど、すごく容姿が整ってるんだ。左右対称でね、彫りが深くて。日本人離れした容姿で、まるで映画俳優みたいなんだ。一緒に歩いてると僕なんて添え物で、居心地悪い時もあるけど、彼といると楽しくて、すごく安心する。
いつの間にかするりと、僕の中に入ってきて、居座ってしまったこの気持ち。
ぐっと、唇を引き結ぶ。すごく自分が惨めだ。
部屋主のいない間に入り込んで、こっそりチョコを作って置いて来ようなんて、我ながら健気すぎて泣けてくる。和泉雅之、どんだけお前ってば、あいつのことが好きなんだよ。
大体なんで僕はチョコなんて作ってるんだろう。相手はショコラティエだぞ。チョコ作りのプロだ。素人の作ったチョコなんて、果たして美味しいって思ってくれるのやら。一応こっ、恋人なんだから食べてはくれるだろうけど、義理で美味しいとか言われても複雑だ。
もういっそのこと、中に唐辛子でも仕込んでやろうかな。伊万里なんか辛いの食べて、いっぱい悶え苦しむと良いんだ。あ、でもショコラティエなんだし、舌がバカになったら大変かな。って、なにを気遣ってるんだよ僕。
腕の中にボウルを抱きしめる。ぎゅぅと。ほんとに、なんで僕、チョコなんて作ってるんだろう。見ろよ、惨めすぎて目からしょっぱい汗まで出てきたじゃないか。
「伊万里のバカ、男前、忘れんぼ。ちょっと…すっごくカッコいいからって、甘えてんじゃない。だいっ嫌いだ。好きだけど」
「えっと、ありがとう?」
「ふぇっ!?」
いきなり背後から聞こえてきた声に、手にしていたボウルが宙を舞った。
手に物を持ちながら、バンザイなんてするもんじゃないね。いくら驚いていたとはいえ。
天井近くまで宙を舞ったボウルは、僕の上でくるりと半回転すると、帽子のようにすっぽり僕の頭に納まった。
「うわっ!!」
「和泉!?」
垂れてくるチョコは、さっきよりもさらに冷めてて熱いってほどじゃなかったけど、とろとろした液体が頭から垂れてきて、非常に気持ち悪い。
急に視界がクリアになったかと思うと、目の前につい今まで考えていた相手がどアップで映った。
「えっ? 伊万里? なんで……」
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